抽象概念とは何か。
-
0:01 - 0:04これからするお話の中では抽象という言葉をよく使いますから、
-
0:04 - 0:08ここでこの言葉の定義をしてみたいと思います。
-
0:08 - 0:09更に大事なことは
-
0:09 - 0:12抽象という言葉を感覚としてつかむことです。
-
0:12 - 0:14抽象(abstract)という言葉は形容詞で、
-
0:14 - 0:16例えば抽象観念とか
-
0:16 - 0:19抽象画などと言いますね。
-
0:19 - 0:21また、動詞としても使います。
-
0:21 - 0:22抽象化するとか、様々な考え方から
-
0:22 - 0:25ひとつの考え方を抽出する、という時にも使います。
-
0:25 - 0:27更に名詞としても使います。
-
0:27 - 0:28要約(アブストラクト)などがそうですが、
-
0:28 - 0:30名詞として使う場合、
-
0:30 - 0:32私がよく使うのは、
-
0:32 - 0:34論文のアブストラクト、つまり、
-
0:34 - 0:37論文の要点を抽出したものです。
-
0:37 - 0:39つまりその論文の概要です。
-
0:39 - 0:40この抽象という言葉は、
-
0:40 - 0:41どんなふうに使おうが、
-
0:41 - 0:44どのような文脈で使おうが、
-
0:44 - 0:47常に、現実の世界にあるものの
-
0:47 - 0:51特徴を表すものであるという共通点があります。
-
0:51 - 0:54名詞、形容詞、動詞として使う場合にもそれは同じです。
-
0:54 - 0:56さて、こちらを現実の世界、
-
0:56 - 0:58現実の世界です。
-
0:58 - 1:01そしてこちら側が
-
1:01 - 1:05観念や概念の世界です。
-
1:05 - 1:08一般的に、抽象とか
-
1:08 - 1:10抽象化するという場合、
-
1:10 - 1:11現実の世界にある、
-
1:11 - 1:13ある物を、
-
1:13 - 1:18考えや概念に置き換えることをいいます。
-
1:18 - 1:22私の場合、抽象ということを最も具体的に、
-
1:22 - 1:26抽象的なものを具体的に、というと矛盾しているようですが、
-
1:26 - 1:28最もわかりやすい方法は、
-
1:28 - 1:32ある形を考えるのです。
-
1:32 - 1:35では、身の回りにある立方体を考えてみましょう。
-
1:35 - 1:38スター・トレックに出てくる
-
1:38 - 1:39ボーグ・キューブや、
-
1:39 - 1:45サイコロでもいいですね。
-
1:45 - 1:47立方体ということですから、
-
1:47 - 1:49サイコロを二つ描きましょう。
-
1:49 - 1:52サイコロ一組、
-
1:52 - 1:54こんな感じです。
-
1:54 - 1:56ルービック・キューブでも結構です。
-
1:56 - 1:57何でも、結構です。
-
1:57 - 1:59例えば、立方体の建物もありますね。
-
1:59 - 2:01立方体の建物です。
-
2:01 - 2:03あるいは家の中に立方体の箱があるかもしれません。
-
2:03 - 2:08さて、あなたは今一般的な立方体を思い浮かべているでしょう。
-
2:08 - 2:10私が考えているような立方体です。
-
2:10 - 2:13このように、一般化するということはある物の特徴を理解することなのです。
-
2:13 - 2:16つまり立方体とは何かということです。
-
2:16 - 2:17が、一つ一つの立方体はそれぞれ違います。
-
2:17 - 2:19これは手で持てるようなプラスチック製品、
-
2:19 - 2:21こっちは白いものですね。
-
2:21 - 2:23こういったものは正確には立方体ではありません
-
2:23 - 2:26こちら側には小さな点があります。
-
2:26 - 2:29これは大型のボーグ・キューブです。
-
2:29 - 2:31実際には存在しませんから
-
2:31 - 2:33想像上のものです。
-
2:33 - 2:35けれどもどれも立方体の特徴を持っています。
-
2:35 - 2:38これが幾何学の面白いところです。
-
2:38 - 2:42実際の物の形の特徴を抽出できるのです。
-
2:42 - 2:45もちろん幾何学では定義があります。
-
2:45 - 2:50それはこんな形で、
-
2:50 - 2:53どの辺も同じ長さです。
-
2:53 - 2:55この辺は1,こちらも1
-
2:55 - 2:57これも1です。
-
2:57 - 2:581でなくてもいいんですが。
-
2:58 - 3:00この辺の長さが
-
3:00 - 3:01どれほどでも、
-
3:01 - 3:02他の辺の長さと同じなのです。
-
3:02 - 3:04この辺の長さはこれと同じです。
-
3:04 - 3:06厳密な意味での定義ではありませんが、
-
3:06 - 3:08そこには確かに
-
3:08 - 3:12立方体の特徴というものが
-
3:12 - 3:14存在するのです。
-
3:14 - 3:17しかし現実の世界には
-
3:17 - 3:19完全な立方体というものは存在しません。
-
3:19 - 3:20型と同じものを作る場合や
-
3:20 - 3:23その寸法を正確に測る場合、
-
3:23 - 3:25全く同じ寸法を得ることはできません。
-
3:25 - 3:32が、抽象化すれば、この辺とこの辺、そしてこの辺は
-
3:32 - 3:35全く同じ長さであり、どの辺でも
-
3:35 - 3:37全く同じ長さとすることができます。
-
3:37 - 3:39つまりこちらの現実世界の具体的な物から
-
3:39 - 3:41別のものになるわけです。
-
3:41 - 3:4424世紀や25世紀の世界を想像するとき、
-
3:44 - 3:49それは現実世界ではありません。つまり一般化されるのです。
-
3:49 - 3:52芸術の世界で使われる抽象画
-
3:52 - 3:54という言葉をご存知でしょう。
-
3:54 - 3:56これが抽象画です。
-
3:56 - 3:58これもやはり一般化という作業です。
-
3:58 - 3:59辞書を引いてみると
-
3:59 - 4:01抽象(abstract)には、20ほど意味があります。
-
4:01 - 4:04しかし基本的にはどれも同じことをいっています。
-
4:04 - 4:09抽象画というのは現実にあるものをそのまま
-
4:09 - 4:12描こうとするものではありません。
-
4:12 - 4:15ルネッサンス芸術では
-
4:15 - 4:17物の形が非常に
-
4:17 - 4:19精緻に描かれています。
-
4:19 - 4:20が、抽象画家は
-
4:20 - 4:22現実の世界をそのまま
-
4:22 - 4:24描こうとはしません。
-
4:24 - 4:27彼らが表現するのは生の感覚、つまり
-
4:27 - 4:31色や質感から受ける感じをそのまま表現するのです。
-
4:31 - 4:33これはジャクソン・ポロックの作品です。
-
4:33 - 4:36ちょっと発音を間違えましたが、
-
4:36 - 4:39写真をとったのは仲間の歴史学者スティーブン・ザッカーです。
-
4:39 - 4:42何が描いてあるのかよくわかりませんね。
-
4:42 - 4:44ジャクソン・ポロックが描こうとしたのは、
-
4:44 - 4:47犬や馬などのようなものではなく、
-
4:47 - 4:49眼に見えないもの、
-
4:49 - 4:51つまり現実の世界では見えない、
-
4:51 - 4:56全く別の何かなのです。
-
4:56 - 4:58抽象という言葉は
-
4:58 - 5:02幾何学や芸術にだけ使うものではありません。
-
5:02 - 5:05普通の暮らしの中でも殆どの物に当てはまります。
-
5:05 - 5:06人と話している時や、
-
5:06 - 5:09言葉や記号を使うとき、
-
5:09 - 5:11私たちはいろいろなものを抽象化しているのです。
-
5:11 - 5:16現実のものの特徴を抽象化、つまり一般化しているのです。
-
5:16 - 5:20例えば犬という言葉です。
-
5:20 - 5:24これは私たちが犬として思い浮かべるものを
-
5:24 - 5:26表すための記号です。
-
5:26 - 5:27頭の中には実際の犬の
-
5:27 - 5:30姿が浮かんでいます。
-
5:30 - 5:32足が四本、
-
5:32 - 5:35やわらかい耳があって、撫でてやりたくなる。
-
5:35 - 5:37私たち人間の一番の友だちですね。
-
5:37 - 5:40これが犬というものであり、
-
5:40 - 5:42犬の特徴です。
-
5:42 - 5:44しかし現実の犬は
-
5:44 - 5:47それぞれ互いに大きく違います。
-
5:47 - 5:48グレート・デンと
-
5:48 - 5:52小型のプードルでは随分違います。
-
5:52 - 5:55が、犬であることは分かるのです。
-
5:55 - 5:58犬の特徴を抽象化してこれが犬だと分かるのです。
-
5:58 - 6:01そしてさらにこれを抽象化すると文字という記号になり、
-
6:01 - 6:03この文字を見れば犬を思い浮かべるのです。
-
6:03 - 6:05数字の場合を考えてみましょう。
-
6:05 - 6:09例えば5という数字、
-
6:09 - 6:12非常によく使いますから、
-
6:12 - 6:14抽象的なものとは思えないかもしれませんが、
-
6:14 - 6:16そうではないのです。
-
6:16 - 6:17数字は単に物の数を表しているだけなのです。
-
6:17 - 6:19こんな風に
-
6:19 - 6:225という数字を表すこともできます。
-
6:22 - 6:25あるいはローマ数字で表すことも、
-
6:25 - 6:27こんなふうに書くこともできます。
-
6:27 - 6:29どれにも共通しているのは
-
6:29 - 6:32それが物の数を表しているということです。
-
6:32 - 6:365はどれかと聞かれれば
-
6:36 - 6:38これを指差す人もいるかも知れませんが、
-
6:38 - 6:41どれも5を表す記号ですが、
-
6:41 - 6:45非常に抽象的なものです。
-
6:45 - 6:47抽象という概念が
-
6:47 - 6:49お分かりいただけたでしょうか。
-
6:49 - 6:50つまり、
-
6:50 - 6:53なかなかいい言葉が見つかりませんが、
-
6:53 - 6:56まあこれが、抽象概念というわけです。
-
6:56 - 6:59あまり親しみやすい言葉じゃありませんね。
Keiko Nozawa edited Japanese subtitles for Abstract-ness | ||
Keiko Nozawa edited Japanese subtitles for Abstract-ness | ||
Keiko Nozawa edited Japanese subtitles for Abstract-ness | ||
Keiko Nozawa edited Japanese subtitles for Abstract-ness | ||
Keiko Nozawa edited Japanese subtitles for Abstract-ness | ||
Keiko Nozawa added a translation |