最初にご紹介するロボットはSTriDERです
「三脚動的自励式試作ロボット」
という意味です
3本脚のロボットで
自然からヒントを得ました
でも自然界に3本脚の生き物なんて
いたでしょうか?
たぶんいないでしょう
ではなぜ? どんな風に動くのでしょう?
それをご説明する前に ポップカルチャーにちょっと目を向けましょう
H G ウェルズの「宇宙戦争」の小説と映画はご存じでしょう
今映っているのは
人気ゲームの一場面です
この架空の物語の中では 地球を脅かす宇宙人が
3本脚ロボットとして描かれています
でも私のロボット STriDERはこんな風には動きません
これは動的シミュレーションの動画です
ロボットがどんな風に動くかご覧ください
ボディを180度反転させています
1本の脚を 他の2本の脚の間に通し 倒れ込むのを支えます
こんな風に歩くわけです
人が二足歩行するときだって
筋肉を使って脚を持ち上げて
ロボットみたいに歩くわけではありません
実際には 脚を振って 倒れるのを支え 立ち上がり
脚を振って 倒れるのを支え…という具合にやっています
体自体の重みや物理的な特性を ちょうど振り子のように
利用しているのです
私たちはこれを受動動的移動と呼んでいます
私たちが歩くときも同じです
位置エネルギーから 運動エネルギーへ
位置エネルギーから 運動エネルギーへ
繰り返し落下するプロセスです
だから自然界にこんな生き物はいないにしても
実際に生物からヒントを得て
生物が歩く原理を応用しているのです
だから生物をヒントにして作ったロボットというわけです
これは私たちが次にやりたいと思っていることです
脚を畳んで遠くへ打ち出します
それから脚を出します スターウォーズみたいですね
着地時はショックを吸収し 歩き出します
この黄色いのは殺人光線じゃありませんよ
単にカメラか他の種類の
センサーを表しています
高さが1.8メートルあるので
藪のような障害物があっても見渡すことができます
プロトタイプを2つ作りました
最初に作ったのが 後ろにあるSTriDER Iで
手前にある小さいのがSTriDER IIです
STriDER Iの問題は重すぎることです
関節の調整などに使うモーターが
たくさん入っていたためです
それで機械的な機構を統合し
1つのモーターですべての動作を
制御できるようにしました
メカトロニクスを使わずに機械的なもので問題を解決したのです
新しい方は本体が軽いのでラボの中でも動かせます
成功した第一歩でした
まだまだ完璧ではありませんので
やるべきことは たくさんあります
次のロボットはIMPASSです
「作動スポークシステムによる知的移動プラットフォーム」の略です
車輪と脚のハイブリッドになっています
リムのない車輪 あるいは
スポークでできた車輪だと考えてください
スポークが個々に動いて ハブを出入りします
車輪と脚の組み合わせです
文字通り「車輪を再発明」したわけです
動いているところをお見せしましょう
この映像では反応的アプローチを
取っています
足の触覚センサーを使って
押すとへこむ柔らかい
変化する地形の上を歩いています
触覚センサーの情報をたよりに
うまく柔らかい地形を移動しています
大きな地形の変化に出会ったときはどうするのか?
ここではロボットの高さの3倍以上ある
障害物にぶつかっています
すると計画的動作モードに切り替えます
レーザー式の距離計や
カメラを使って障害物の大きさを識別し
スポークをどう動かすか注意深く計画し
調整することによって このように
とても優れた機動性を発揮します
こんなものをご覧になったのはきっと初めてでしょう
私たちが開発した
超高機動性ロボットIMPASSです
ほら! すごいでしょう?
自動車の運転では
アッカーマン ステアリングと
呼ばれる方法が使われます
前輪がこの様に曲がります
小さな車輪を持つロボットでは 多くの場合
差動ステアリングを使います
左の車輪と右の車輪を逆向きに回転させるのです
IMPASSの場合 様々な異なるタイプの動きをさせることができます
例えば 左右の車輪が1つの車軸でつながり 角速度が同じであっても
曲がらせることができます
スポークの長さを変えてやれば良いのです
すると直径が変わって 左右に曲がります
これはIMPASSにできる面白いことの
ほんの一例です
次のロボットはCLIMBeR
「ケーブル支持式有足知的適合動作ロボット」です
私はNASAのJPLの科学者たちとよく話をします
マーズローバーが有名ですね
地質学者がいつも言っているのは
科学的に本当に興味深い場所というのは
いつも崖のようなところにあるということです
現在のローバーでは行くことができません
それで私たちは ごつごつした崖を
よじ登れるロボットを作りたいと思いました
それがこのCLIMBeRです
3本脚で 見えにくいですが
上にウィンチとケーブルがついています
そして最適な足の置き場を見つけ
力の分散のさせ方を
リアルタイムで計算します
表面にどれだけの力をかければ
滑ったり転んだりしないか?
安定したら 足を持ち上げ
ウィンチを使って這い上がります
捜索や救助のような用途にも使えるでしょう
5年前に私はNASAのJPLで
ひと夏の間 研究スタッフとして働きました
その時すでにLEMURという6本脚ロボットが開発されていて
これはそれをベースにした MARSです
「多肢ロボットシステム」 六本脚を持つロボットです
適応型の歩行プランナーを開発しました
面白い荷物を積んでいますね
学生たちは楽しいことをやりたがります
凹凸のある地形を越えています
こちらは粗い砂地の上を
歩いているところです
湿り具合とか砂粒の大きさによって
脚の沈み加減のモデルを変更します
足運びを環境に適応させることで このような地形をうまく渡ることができます
すごく面白いものをご覧に入れましょう
ラボを見学しに来る人はたくさんいるのですが
お客様が来るとMARSはコンピュータの前に歩み寄り
タイプし始めるのです
「こんにちは 私はMARSです
バージニア工科大学ロボティクスラボRoMeLaへようこそ」
これはアメーバロボットです
技術的な詳細をご説明している時間はないのですが
いくつか実験の様子をお見せしましょう
実現可能性を検討している段階です
弾性のある表面に位置エネルギーを蓄えて移動したり
あるいは弾性コードを使って前後に動きます
こちらはChIMERAで
ペンシルバニア大の人たちと
協力して作っている
化学物質に反応する
アメーバロボットです
あるところにあることをすると
魔法のように動き出します 変な生き物みたいですね
お次は新しいロボットのRAPHaELです
「弾性靱帯を持つ空気式ロボットハンド」です
商用で非常に良いロボティクスハンドはたくさんありますが
それらの問題は値段が高すぎるということです 何万ドルもします
だから義肢という用途で使うのは
あまり現実的ではありません
私たちはこの問題に別な方向から取り組みたいと思いました
電気モーターや電気機械アクチュエーターを使うのではなく
圧搾空気を使っています
関節のための新しいアクチュエーターを開発しました
柔軟にできていて 空気圧を変えるだけで
力加減を簡単に変えられます
ジュースの空き缶を潰すことができますが
生卵や電球のような壊れやすいものを
掴むこともできます
一番いいのは 最初のプロトタイプ作成に200ドルしか かからなかったことです
次はヘビ型ロボットのシリーズで
HyDRASという名前です
「超高自由度ヘビ型連節ロボット」です
このような地形を よじ登ることができます
こちらはHyDRASの腕です
12の自由度のあるロボットアームです
いかしているのはユーザインタフェースの部分です
あのケーブルは光ファイバーです
この学生は たぶん初めて使うのですが
関節を様々に動かすことができます
たとえばイラクなんかの交戦地帯では
道端に爆弾があります
現在はリモコン式の武装車両を送り込んでいますが
すごく時間がかかり
複雑な腕を操作できるようオペレータを訓練するのも高く付きます
このロボットなら直感的に操作できます
この学生も恐らく初めて使っているのですが モノを拾い上げて操作する
とても複雑なタスクをうまくこなしています
このようにとても直感的なんです
次のロボットは 現在の我々のスターです
このDARwInには実際ファンクラブがあります
「ダイナミック人型知的ロボット」です
私たちはヒューマノイド つまり
人型の歩くロボットにとても関心があります
それで小型のものを作ってみることにしました
2004年当時には
とても革新的なことで
実現可能性を探る研究でした
どんな種類のモーターを使うべきか?
そもそも可能なのか? どのような制御が必要になるか?
これにはまだセンサーがついていません
開ループ制御です
皆さんはきっとご存じですね
センサーなしでバランスを崩したら…
(笑)
この成功をベースとして 次の年には
運動学に基づいてちゃんとした
機械設計を行い
2005年にDARwIn I が誕生しました
立ち上がり 歩きます
しかしまだコードが繋がっています
外部の電源と 外部での計算処理に
まだ頼っていました
2006年に本当に面白いものになりました
知性を持たせたのです 必要な計算能力を与えました
1.5GHzのPentium M
2つのFireWireカメラ 8つのジャイロ 加速度計
足には4つのトルクセンサー リチウム電池
DARwIn II は完全に自律的です
遠隔操作はしていません
ケーブルもついていません 周りを見回し ボールを探し
周りを見回し ボールを探し 自律的な人工知能によって
サッカーをプレーします
見てみましょう この時はまさに私たちの最初の試行でした
ゴーーール!!
RoboCupという大会があります
ご存じの方がどれくらいいるかわかりませんが
国際的な自律ロボットによるサッカー競技会です
RoboCupの目標は 2050年までに
等身大の
自律ヒューマノイド型ロボットで
人間のワールドカップ優勝チームと試合をして
勝つことです
それが真の目標です 野心的な目標ですが
私たちはやれると信じています
2008年は中国で行われました
この競技会にアメリカから参加したのは
私たちが最初でした
今年2009年はオーストラリアで行われました
3対3で全く自律的に
試合を行います
そら入った!
ロボット同士で
チームプレーを競うのです
とても見応えのある エキサイティングな
競技イベントの形を取った研究イベントです
これは美しいルイ ヴィトンカップの
トロフィーです
最高のヒューマノイドに与えられる賞です
来年には是非 このトロフィーを初めて
アメリカに持ち帰るチームに
なりたいと思っています
(拍手)
DARwInは他にもたくさんの才能があります
去年はホリデーコンサートで
ロアノーク交響楽団の指揮をしました
これは次世代のロボットDARwIn IV です
より賢く より速く より強くなっています
その能力を披露しようとしています
「俺はマッチョだ 俺は強いんだ」
ジャッキー チェンみたいな
カンフーアクションだってできます
(笑)
そして歩き去ります これがDARwIn IV です
ロビーでご覧いただけます
これをアメリカ初の
走れるロボットにしたいと思っていますので ご期待ください
私たちのエキサイティングなロボットの動作をご覧頂きました
では私たちの成功の秘密は何でしょう?
どうやって考え出しているのか?
どうやってアイデアを発展させているのか?
私たちは都市域を完全自動走行する
自動車を作り DARPAアーバンチャレンジで
50万ドルの賞金を獲得しました
私たちはまた 視覚障害者が運転できる
世界最初の車も作りました
これは視覚障害ドライバーチャレンジと呼んでいます
まだまだお話ししたいエキサイティングなロボティクスプロジェクトがたくさんあります
これは私たちが2007年秋に
ロボティクス関係のコンペで受賞したものです
秘密は5つあります
まずどこからインスピレーションを得るか
イマジネーションの閃きをどうやって得ているかです
これは本当のことで 私自身の話です
夜眠るとき 明け方の3時か4時頃ですが
横になって目を閉じると 線や円や
いろいろな形が浮遊して
組み合わさり ある種のメカを形作ります
そうすると私は 「ああ これはいいな」と思い
ベッドの脇に置いてあるノートと
特別なLEDライト付きペンを取り出します
明かりを点けて妻を起こしたくはないので
思いついたことをすべて書き 絵を描いて
それから眠りにつきます
毎朝一番にやるのは
一杯のコーヒーよりも 歯磨きよりも先にするのは
そのノートを開いて見ることです
多くの場合何も書かれていません
時々何か書かれていますが
大抵 自分でも何が書いてあるのかわかりません
朝の4時に寝ぼけて書いたのですから無理もありません
解読する必要があります
でも時々そこに すごいアイデアが書かれていることがあります
「見つけた!」という瞬間です
すぐに書斎に走り コンピュータの前に座って
アイデアを打ち込み スケッチを描き
そうやってアイデアのデータベースに保存します
そして公募があると
要件に合う可能性のあるアイデアを
その中から探します
ピッタリのものがあれば 研究企画書を書いて
研究資金を獲得します 私たちの研究プログラムはそうやって始まります
しかしイマジネーションの閃きだけでは十分ではありません
そのようなアイデアをどうやって発展させるのか?
私たちのラボRoMeLaでは 素晴らしい
ブレインストーミングセッションをやっています
みんな集まって 課題や
社会的問題について議論し 話し合います
始める前にルールを確認します
そのルールとは
「誰のアイデアも批判しない
どんな意見も批判しないこと」です
これはとても重要で 学生は
自分の意見や考えを他の人がどう思うか不安になったり
怖れたりするものだからです
このルールを徹底するだけで 学生たちは
驚くほど自由にアイデアを出せるようになります
彼らはすごいクールでクレージーな素晴らしいアイデアを持っています
部屋全体に創造的なエネルギーが充満しているかのようです
そうやってアイデアを発展させるのです
もう時間がありませんが もう1つお話ししておきたいのは
アイデアを閃めかせ 展開させるだけでは十分でないということです
TEDで素晴らしい講演がありました
ケン ロビンソン卿です
彼は教育や学校がいかに
創造力を殺しているかという話をしました
これには実際2つの面があります
独創的なアイデアと 創造力と
工学的直感だけでは
できることが限られています
ただの工作以上のことをやり
趣味のロボットを越え
しっかりした研究に基づいて本当に大きなロボティクスの
課題に取り組もうと思ったら
他にも必要になるものがあります そこが学校の生きてくる部分です
悪者たちと戦うバットマンは
ユーティリティーベルトや 引っ掛けフックや
さまざまな小道具を持っています
私たちロボティクス研究者 エンジニア
サイエンティストにとって そのツールに当たるのが大学の授業や教程なのです
数学 微分方程式
線形代数 科学 物理
最近では化学や生物学まで活用しています
これらは私たちが必要とするツールなのです
ツールがたくさんあるほど バットマンは
悪者相手に効果的に戦うことができます
私たちには 大きな問題に取り組むための足がかりが増えます
教育というのはとても重要なのです
またそれだけでなく
本当に熱心に 働く必要があります
私は学生にいつも言っています
「賢く働き そして熱心に働くこと」
後ろに出ている写真は午前3時のラボの様子です
私たちのラボに午前3時とか4時に来ていただけば
きっと学生たちがまだ働いているでしょう
私がしろと言ったからではありません みんなすごく楽しいからやっているんです
これが最後の点に繋がります
「楽しみを忘れないこと」
これこそ私たちの成功の一番の秘密です みんな本当に楽しんでやっています
最高の生産性は楽しんでいるときにこそ得られるのです
それが私たちのしていることです
以上です どうもありがとうございました
(拍手)