WEBVTT 00:00:00.086 --> 00:00:03.746 こんにちは クリスチャン・アパルタです 00:00:03.771 --> 00:00:06.793 専門用語の訳し方について  お話ししたいと思います 00:00:07.800 --> 00:00:10.243 翻訳者として 私達が皆知っているように 00:00:10.268 --> 00:00:13.926 一つの単語でも色々な意味があります 00:00:13.951 --> 00:00:16.481 単語を訳せばいいというのではなく 00:00:16.506 --> 00:00:20.719 その単語が何を指し示しているのか 訳出先の言語ではどう使われているのか 00:00:20.744 --> 00:00:25.466 わからないといけません 00:00:26.673 --> 00:00:32.530 だいたいは文脈によって判断します 00:00:32.555 --> 00:00:36.500 "mouse"という単語が最初の文で出てきたら 00:00:36.525 --> 00:00:42.956 文脈によって これは一般的な意味で言う 00:00:42.981 --> 00:00:45.784 ネズミであるとわかりますが 00:00:45.849 --> 00:00:50.523 二番目の文では これがもう少し領域が絞られて 00:00:50.548 --> 00:00:52.856 コンピューターのマウスを 指すことがわかります 00:00:53.401 --> 00:00:56.272 最初の文章に出てくる"mouse"を訳す時には 00:00:56.297 --> 00:00:59.518 その言語の全般的な知識に照らし合わせて 00:00:59.646 --> 00:01:05.488 「文字通り」「一語一語」訳します 00:01:05.830 --> 00:01:09.218 しかし二番目の文章で出てくる"mouse"では 00:01:09.243 --> 00:01:11.462 特殊領域の話になるので 00:01:11.487 --> 00:01:13.937 文字通りに訳すことができません 00:01:13.962 --> 00:01:16.580 しかし もし 00:01:16.890 --> 00:01:18.929 コンピュータのことを何も知らなければ 00:01:18.954 --> 00:01:20.396 自分の言語では何と呼ばれているか 00:01:20.421 --> 00:01:24.856 調べ物をしなければなりません 00:01:25.496 --> 00:01:26.734 それが重要なことで 00:01:26.759 --> 00:01:31.948 英語でも一つの単語で二つの意味を 持つこともありますし 00:01:32.092 --> 00:01:38.494 外国語では まったく違った 文字通りの訳語ではない場合もあります 00:01:38.645 --> 00:01:43.253 例えば日本語では "mouse"はげっ歯類の 「ネズミ」という意味になりますが 00:01:43.333 --> 00:01:47.944 コンピュータの「マウス」 という意味にもなります 00:01:47.969 --> 00:01:51.104 「マウス」と「ネズミ」では まったく違う意味です 00:01:52.299 --> 00:01:58.302 特定の領域で使われる単語を 「専門用語」と呼びます 00:01:59.017 --> 00:02:05.876 ほとんどの場合 単語やフレーズが 専門用語かなのかどうか簡単にわかります 00:02:06.162 --> 00:02:09.066 専門用語は大文字で始まることがよくあります 00:02:09.198 --> 00:02:14.523 この2つのフレーズの意味は まったく違っていて 00:02:14.548 --> 00:02:17.704 あなたの言語での訳も違うものになるでしょう 00:02:17.729 --> 00:02:21.879 スペイン語では "la Gran Uralla China"は 00:02:21.904 --> 00:02:24.655 文字通りでは"la pared grande"で 00:02:24.680 --> 00:02:28.290 家の中にある壁といった意味です 00:02:28.323 --> 00:02:34.912 難しく見えたり 外国語のように聞こえるのも 専門用語の場合があります 00:02:34.936 --> 00:02:38.927 "velocity"(速度)や "aperture"(口径)といった単語は 00:02:38.953 --> 00:02:43.065 調べたほうが良いという気になります 00:02:45.769 --> 00:02:52.785 しかし専門用語か見分けにくい時もあります 00:02:52.809 --> 00:02:57.601 そんな時は英語で専門用語かどうかを調べて 00:02:57.626 --> 00:03:03.494 翻訳先の言語に 確立された訳語があるかを調べます 00:03:03.520 --> 00:03:06.416 しかし訳語を自分で作らないといけない こともあります 00:03:06.996 --> 00:03:10.373 こんな経験をしたことがあります 00:03:10.698 --> 00:03:14.140 ポーランド語の翻訳を レビューをしていた時のことです 00:03:14.156 --> 00:03:17.724 キンガ・スコルプスカが翻訳した ヤナ・レビンの「宇宙の音」についての 00:03:17.749 --> 00:03:19.318 トークでした 00:03:19.334 --> 00:03:23.755 翻訳者の許可を得てこの例をお見せしますが 00:03:24.562 --> 00:03:29.475 ヤナは"dust lanes"という単語を使っていて 00:03:29.500 --> 00:03:34.459 ポーランド語では"ścieżki pyłu"と言っています 00:03:34.484 --> 00:03:38.768 文字通りでは「埃の道」という意味です 00:03:38.840 --> 00:03:43.721 ジャナはトークの中で 専門用語を多用しているので 00:03:43.746 --> 00:03:48.607 私は文字通りの訳で良いか迷いました 00:03:49.126 --> 00:03:55.104 "dust lane"が専門用語か 知る必要がありました 00:03:56.089 --> 00:03:58.509 "dust lane” galaxy という言葉を グーグル検索しました 00:03:58.534 --> 00:04:04.928 二重クオーテイションマークは 完全一致検索を示します 00:04:05.715 --> 00:04:10.341 Wikipediaでソンブレロ銀河という 記事があって 00:04:10.365 --> 00:04:15.338 dust laneが同じ意味で使われていました 00:04:15.723 --> 00:04:19.853 ですから"dust lane"は専門用語だと 確認できたのです 00:04:19.882 --> 00:04:24.191 今度はポーランド語の訳語を 見つけなければなりません 00:04:24.500 --> 00:04:30.498 最初にポーランド語のソンブレロ銀河の 見出し語を見つけました 00:04:30.657 --> 00:04:34.234 文字通りに訳すと こんな文章がありました 00:04:34.388 --> 00:04:39.734 「非発光性の物質のベルト(torus)で 部分的に遮られている」 00:04:40.485 --> 00:04:46.984 この時点では"torus"は"dust lane"の ポーランド語訳として適切に思えましたが 00:04:47.009 --> 00:04:50.573 本当にこの記事の中だけで使われているのか ポーランド語でも確立された語なのか 00:04:50.598 --> 00:04:53.676 確信が持てませんでした 00:04:54.160 --> 00:04:58.576 そこで もう一度グーグルで検索をして 00:04:58.744 --> 00:05:03.251 その時は"torus galaktyka"という訳語を 見つけることができました 00:05:03.744 --> 00:05:08.154 ウィキペディアでセイファート銀河 という見出し語の中にあり 00:05:08.718 --> 00:05:13.678 文字通りに訳すと こうなる一文を見つけたのです 00:05:13.703 --> 00:05:18.926 「… 活発な中心核に近接している。 (ダストトーラスとしても知られている)」 00:05:19.434 --> 00:05:20.505 それで 00:05:20.974 --> 00:05:24.807 やっと翻訳が終わったと思いました 00:05:24.832 --> 00:05:30.321 "dust lane"はポーランド語で"torus pylowy" もしくは"dust torus”と訳しました 00:05:31.020 --> 00:05:35.527 しかし この二つは似ていないかもと 思いついたのです 00:05:35.552 --> 00:05:39.598 "lane"という単語は普通 直線のものに使われますが 00:05:39.622 --> 00:05:42.145 丸いものにも使われます 00:05:42.171 --> 00:05:46.016 "torus”は常に円形です 00:05:46.294 --> 00:05:50.912 そこで英語の"dust lane"という単語が 00:05:50.937 --> 00:05:55.315 円形のものにも使われているか 確かめる必要がありました 00:05:55.340 --> 00:05:58.069 "torus"で使われているようにです 00:06:00.007 --> 00:06:03.911 そこでもう一度検索して "dust lane” galaxyを調べました 00:06:03.936 --> 00:06:05.872 しかし今回は画像検索です 00:06:05.897 --> 00:06:09.498 しかし表示された銀河の画像では 00:06:09.523 --> 00:06:13.411 自分の考えが合っているとも 間違っているとも言えませんでした 00:06:14.126 --> 00:06:15.941 そこで 別の検索をしました 00:06:15.966 --> 00:06:18.775 "直線の|長い dust lane" です 00:06:18.791 --> 00:06:23.203 この垂直線は OR検索の意味です 00:06:24.572 --> 00:06:29.294 普通 円形と言えば 「直線の」や「長い」とは表現されません 00:06:29.874 --> 00:06:34.552 そこで銀河の画像や説明がある ページにたどり着き 00:06:34.577 --> 00:06:39.139 「長いdust lane」という表現がある 説明を見つけました 00:06:39.680 --> 00:06:44.855 しかしそのページに記載された この説明と画像を見比べると 00:06:44.880 --> 00:06:51.280 どれも同じように見えました 00:06:51.305 --> 00:06:56.872 ですから"dust lane"は 円形のものを指すと理解できました 00:06:57.041 --> 00:07:00.662 そこで訳語を決めました 00:07:00.687 --> 00:07:03.408 "Dust lane"は"torus pylowy"と 訳すことにしたんです 00:07:03.433 --> 00:07:06.423 ポーランド語の逐語訳では "dust torus"という意味です 00:07:08.000 --> 00:07:12.889 翻訳者の皆さんは いつもこのように調べ物をしているでしょう 00:07:12.914 --> 00:07:15.674 この話をしたかったのは 00:07:17.945 --> 00:07:23.127 自分の知らない専門用語を学んで トークの本質を知ることは 00:07:24.270 --> 00:07:30.380 翻訳でも一番楽しいことだからです 00:07:30.896 --> 00:07:32.134 ありがとうございました